エウラリアの楔 1st fragment CD 『エウラリアの楔』 特設サイト

『yo heave ho yo heave ho
 yo heave ho yo heave ho

俺たちゃ海賊 海のレオンナ(ライオン) 狩猟略奪 お手の物

降伏すれば 助けちゃやるが 抵抗すれば 皆殺し

指輪は ここに ほらおいていきな お嬢さん

 yo heave ho yo heave ho
 yo heave ho yo heave ho

俺たちゃ海賊 荒くれロボバ(狼) だけど厳しき 掟あり

誘拐痛快 破壊も甘美 だけど幼子にゃ 手は出さぬ

破れば 定めの 大口開けた ティブローン(鮫)

 yo heave ho yo heave ho
 yo heave ho yo heave ho 』



海風に乗ってゆるやかに海路を進む船の甲板に、陽気な舟歌が響く。
男達は帆を張り、舵を切り、次の場所へと進路を進めていく。


「バハルド、伝令を飛ばしてエヴルー艦隊に渡りをつけてくれ」

操舵室の一角で、椅子にドッカリと腰をかけた女海賊ナタリアは、
全幅の信頼を寄せる副船長に言った。

「ああ、それならもうエフレムに指示してあるが、経過を確認してこよう」

バハルドは手を止め、少し離れた所で衣類を取り込んでいた少女に交代要請の声をかけた。

「ダヒカ!悪いが代わってくれ。昨日よりは櫛の通りがいいから」
「はぁい!」

ダヒカと呼ばれた少女は、藁で編んだ大きな籠に大急ぎで布類を突っ込み、バハルドから 櫛を受け取ると、そのままナタリアの髪を梳かしにかかった。
まだ幼さの残るあどけない顔が、その櫛の通りの悪さに嬉しそうにくしゃりと歪む。

「せんちょー相変わらず髪の毛クッシャクシャー!確かに昨日よりはマシだけどーぉ」
「イタタッ!……だから、もういっそのこと短く切らしてくれと……」
「ダメッ!!!絶対切っちゃダメなんだからね!みんなが怒るんだから!」

『毎朝、船長の髪を誰かが梳かす』事は、なぜだかこの船の船員達の日課になっている。
ナタリアとしては、こんなに長くて多くて鬱陶しいだけの髪など邪魔なだけであるから 切ってしまいたくてしょうがないのだ。

「あ、そうだ!この前東洋系のいい香油、ダムアが盗ってきてくれたから今晩塗ってあげる!」
「……あぁ、頼む」

こういう時のクルーには逆らわないに限る。
以前夏場に暑いからと、自分で髪をバッサリと切った時などバハルドを始め、クルー達に大説教を食らった上、 船室に閉じ込められた事があった程だ。

「ところで、まだ吐いてやがるのか、あいつは?」

あいつ、とは、昨日アナスタシアからの“贈り物”として搬送されてきた少女クラウディアの事だ。
港を出てからというもの、ろくに口を開かない上、慣れない船上生活だからか、嘔吐してばかりいる。

「あの様子じゃ船に乗るの初めてジャないかなぁ。身なりも立ち振る舞いもなーんかジョーヒンだし、 よっぽど身分の高いお姫サマ?」
「さーなぁー、ま、レオンの所に送り届けるまでの関係だ。細かい事はあんまり詮索しないでやってくれ」
「なんか吹っ切れてるね、せんちょー」
「あ?うだうだ言っても仕方ねぇだろ。レオンの所に無事に送り届ける。
何かめんどくせぇのが襲ってきたら迎撃ついでに金目の物をいただいていく。レオンにも礼金をはずませる。
それだけの事だ。
そうすれば新しい帆布だって買えるだろうし。久しぶりに皆で港町でうまい物も食えるだろ?」
「ふふー。ごちそう楽しみ♪さ、終わったよー。折角綺麗な御髪なんだから、毎日嫌がらずに お手入れさせてね!せんちょー!」

そう言ってダヒカが船室を出ていった後、ナタリアも甲板へと出ると、海風が、仕上げとばかりに彼女の髪を撫でた。