エウラリアの楔 1st fragment CD 『エウラリアの楔』 特設サイト

「ああ、ダヒカ、ダムアありがとう。そこに置いておいてくれ」

目が覚めた時、クラウディアはベッドの上にいた。
長い間蹲っていた狭い箱の中や無粋な海賊船の甲板の感触とは違い、柔らかな羽毛が心地よく、 再び眠りに落ちそうになる。
先ほどまで随分酷い船酔いに苦しめられていたはずなのに、あの初めて経験する不快感は、 もうどこにも残っていないようだった。


「「あっ!せんちょう!目が覚めたみたい!!」」


二色の声に驚いてベッドから跳ね起きると、傍らには二人の子供がいた。
よく見ると同じ顔をしていて、色違いの4つの瞳はじっとクラウディアを見つめている。

「…………」

「やっと起きたか。えーと、クラウディア?」

今度は別の方向から声がし、慌てて振り返るとそこにはナタリアがいた。
まだ焦点が定まらず意識もはっきりしていないせいか、 クラウディアはナタリアの差し出した飲み物を素直に受け取り口に運んだ。
温かい液体がクラウディアの体を優しく満たす。

「お前、もうかれこれ3日間も眠ってたんだぞ」

「……3……日…………」

体が思うように動かないのはそのせいだったのか。
とつぶやくと、突然ズシリと重い衝撃がクラウディアに圧し掛かった。

「「ねぼすけー!ねぼすけー!」」

「こら、ダヒカ、ダムア、ベッドに乗るな」

ナタリアはベッドに乗り上げた二人を軽く小突き、首根っこを掴んで床に下ろす。

「なんだ、この船にはこんな子供まで乗せているのか……?」

徐々に意識のはっきりしてきたクラウディアは【こんな船で大丈夫か?】と皮肉たっぷりにナタリアをねめつける。

「小さいからってナメてかかるとイタイ目みるぞー!箱入り娘!」

ダムアと呼ばれた少年が、ピンっ とクラウディアの鼻を弾いて言った。

「だっ、誰が箱入り娘だ!無礼者!!!」

弾かれた鼻を押さえながら、拳を振り上げると、ダムアはさっとナタリアの後ろに逃げ込む。

「箱に入ってきたからハコイリムスメだもん。な、ダヒカ」

ダヒカと呼ばれた少女はクラウディアの美しい銀髪を引っ張って訂正する。

「箱入りコムスメの方がいいかも。ね、ダムア」

「なっ…………!!」

「「ハコムスメー!ハコムスメー!!きゃはははは」」

真っ赤な顔で拳を握り締めているクラウディオと双子達の様子を見かねたナタリアが、ようやく仲裁に入る。

「こら、いい加減仕事に戻れ。二人とも」

「「はぁーい!!」」

ナタリアの命令に素直に従うと、子供達は笑い声をあげながらパタパタと船室を後にした。