エウラリアの楔 1st fragment CD 『エウラリアの楔』 特設サイト

「お前、綺麗な首飾りをしてるなぁ」

甲板で、あからさまに不機嫌そうな顔をした少女に、特徴のある低めの女の声が届いた。

「……え?……う、うわぁ!!!」
クラウディアはナタリアの方を振り向くやいなや、その姿に驚愕し、思わず目を逸らしてしまった。
塗れた美しい金色の髪を両手で絞り、水を滴らせながらこちらにやってきたナタリアが、 上半身に全く何も纏っていなかったからだ。
形の良い大きな乳房が太陽の下にさらされ、滴り落ちた水分も相まってその肢体はきらきらと、 普段の物騒な物言いからは程遠い程妖艶な姿を演出していた。

「な、何か着ろ!!は、は、はしたない!お前はそれでも女かっーー!!!!」

顔を朱に染め目を硬く閉じ、叫ぶクラウディア。
あまりの大声に船達は何事かと顔を覗かせたが自分達の船長の姿を確認すると、 何事もなかったかのように各自の仕事へと戻って行った。

「あー?女のハダカなんて別に珍しくも何ともないだろーが」

ナタリアは本当に何とも思っていないらしく、それにお前だって女だろーがと言い捨てて鼻歌交じりに髪を絞り続けている。
クラウディアが再び口を開きかけたその時、遠方からものすごい足音が聞こえ、 ナタリアの背後で止まったかと思うと逞しい腕が伸びてきて、 神業のような素早さで鮮やかな色のパレオをナタリアに巻きつけ胸元をしっかりと包み、 最後に布の端を首元で丁寧に結んだ。

「動きまくった後だからまだ暑いんだよ。バハルド」
「教育上良くない。着とけ」

ナタリアは抗議の声を上げたが、バハルドの有無を言わせぬ目力に、しぶしぶ

「……へぇい」

と頷いた。
バハルドが去ったあと、一緒にひっついてきたのか小さな双子達がナタリアにまとわりついてくる。

「さっきの船に良くにあうパレオがあってよかったね!せんちょー!とってもヒワイだよ!」
「ちがうわよダムア!せんちょーみたいなのはヒワイじゃなくてアバズレっていうのよ!」

ダムアのいう【さっきの船】というのは、航行中に遭遇した貴族船の事である。
はるか遠方に貴族船を確認した時点でナタリア達はめいいっぱい着飾って【貴族】になりすまし、 救難の煙幕を上げた。
そして
≪自身の船が航行困難になったため、近くの港まで船を引いて欲しい≫
と、恭しく獲物に乞うてみせた。

お人よしの貴族たちはまんまと騙され、ナタリア海賊団に金品を奪われた挙句、 動力部を破壊された上捕縛されたまま海上を漂う事はめになったのであった。