エウラリアの楔 1st fragment CD 『エウラリアの楔』 特設サイト

「……誰だよ、お前達にそんな【教育上良くない】単語を教えたのは……」

ナタリアがげんなりして聞くと、双子達-ダムアとダヒカ-は元気な声いっぱいに叫んだ。

「「ツバキおばあちゃーーん!!」」

「オババめ……」

額に青筋をたてて、ナタリアが立ち去っていく。
残されたクラウディアは、間を持て余して空を仰いだ。

「せんちょー、ツバキおばあちゃんとまた戦る気ね」

とダヒカ。

「どうせコテンパンにやられるのにね」

とダムア。

ナタリアの後姿を見送って、楽しそうにきゃらきゃらと笑いあう愛らしい双子達。

「……ツバキって、もしかして掃除婦のあの老婆か?」

ダムアとダヒカの会話に不振な点を感じたクラウディアは思わず話しかけてしまう。

「「そう!ツバキおばあちゃん」」

クラウディアは船内の一角に、みすぼらしい老婆が座り込んでいたのを思い出す。
年の頃は80を超えたあたりかそこらの容貌で戦う事などおろか、 立って移動するのにも苦労しているように見受けられた。

「また戦る……って、あ、あの女はあんな生い先短い老婆をつるし上げるつもりなのか!?」

正気の沙汰じゃない!止めなければ!と勇むクラウディアの前に立ちはだかった双子は、 左右対称に唇の前で人差し指をチッチッと振る。

「「ちーがーうーの、クリス。コテンパンにやられるのはせんちょーのほうなの」」

「はぁ!?」

「ツバキおばあちゃんには誰も剣で勝てないの」
「バハルドがむかーしむかーし1回勝った事があるだけなんだって」

わけがわからない……という顔をしていると甲板の上でワーワーという海賊達の歓声が響き渡った。


「さあさあ、張った張った!!! 我らが美貌の船長ナタリアと我が船の誇る最強剣士ツバキ・ホウジョウの第536回目の勝負がはじまるぞー!!」

「今日こそは勝ってくださいよー船長!!」

「ツバキばぁさーん!今回もがっつり稼がせてくれよなー!!」


見れば海賊達が円を組んでナタリアと老婆を囲んでおり、 みんなそれぞれ紙幣を握り締めている。
円の中心では柄の細工が美しい見事なファルカタを構えているナタリアと 黒っぽい奇妙な武器を腰にひさげているツバキが睨みあっていた。

「本当に止めなくて大丈夫……なのか?」

まったく状況が飲み込めないクラウディアに対して、ダヒカがにんまりと微笑んで答える。

「「大丈夫。あれはせんちょうの剣のお稽古みたいなものだから」」

そういうと双子達はクラウディアの両側にまわり、手を握る。
やわらかく小さなその手を、クラウディアは無意識のうちに握り返していた。