エウラリアの楔 1st fragment CD 『エウラリアの楔』 特設サイト

広大な土地と人民を有するエスパーニャ国王には、かつて二人の寵臣がいた。
モンデハル候ヨアヒムとインファンタド伯アルトゥロである。

モンデハル家は代々多くの領地を所有する大貴族の筆頭で、その一門は王国の内外の発展に貢献した立役者達だった。
中でもモンデハル一族の筆頭ヨアヒムは、その美貌を武器に人心を掌握し、常に国王の傍らに座してその寵愛を受けていた。
一族を要職につけ、子女を王室に嫁がせて縁戚になるなど、宮廷政治を思うがまま取り仕切る。
生まれながらに約束された爵位と、何よりも大きな王の寵愛という後ろ盾。
飛ぶ鳥を落とす勢いのヨアヒムに対抗し得る者など、この宮廷内にはいないように思われていた。


そこに突如として現われ、モンデハル一族の栄華に投石した男がインファンタド伯アウトゥロである。
彼は一代でエスパーニャ海軍総司令官までのし上った英雄であった。
父親は一地方の小領主に過ぎなかったが、長子であるアルトゥロは類まれなる軍才の持ち主で、
開墾や税制などには全くもって興味を示さなかった。
待っていれば易々と自分の物になるはずの生地よりも、
書物の中や流れの芸人達からもたらされる広大な海の世界に思いを馳せて育った。 幼少より領主の跡取りたらんとの教えを強要してくる父親に反発したアルトゥロは、成人の日の儀の前夜、
単身家を飛び出した。

そしてそのままエスパーニャ海軍に志願し、身分を偽り下級兵士となり、やがてその頂まで上り詰める事になるのであった。
その異例の業績と経歴が国王の目にとまり、下級貴族ながら伯爵の位を得るまで至ったのである。
国王はヨアヒムよりも生粋の上級貴族ではないアルトゥロに次第に興味を移し始め、
彼を私室に招いては海賊達との戦いや領海をめぐる他国との交戦、彼の故郷の領民たちの慎ましやかな暮らしぶりや豊穣を祈る祭り等、 普段王が目にする事も、耳に聞くこともないような話を聞くのを楽しんだ。
屈託が無く真っ直ぐな気性のアルトゥロとの語らいは、王にとって生臭い宮廷闘争を忘れさせてくれる唯一の安らぎとなっていたのだった。


王のお召しが激減し、それに業を煮やしたヨアヒムは、アルトゥロの失脚を謀るため宮廷内で画策を始める。
国王の寵をめぐる争いは、やがて飛び火して宮廷中に広がり、宮廷はモンデハル派とインファンタド派とに大きく分かたれてしまう事となった。


アルトゥロは元々、大海原を翔ける船上の男であり、陸地での出世には全く興味が無かった為、ヨアヒムと争うつもりなど微塵も無かった。
また、宮廷内には友も少なく、唯一語り合える存在といえばアルバ公爵ベルトランくらいのものだった。

ベルトランはかつて、航海中に海賊に襲撃され、首を落とされそうになっていた所をアルトゥロに救われたという経緯を持っており、
宮廷でアルトゥロと偶然再会した事からその親交が始まった人物である。
事態を憂いたアルトゥロは、宮廷を下がる旨を王に直訴するとベルトランに告げ、ベルトランは、もしもの時はアルトゥロを無事に逃がす手はずを整えると約束する。


しかし、結果としてアルトゥロは、兼ねてからヨアヒムの蛮行に憤慨していた反モンデハル派勢力達に強引に担ぎあげらる形となってしまったのだった。
モンデハル一族の、巧妙に張り巡らされた策略と人脈と血の絆は、烏合の衆であったインファンタド派を次々と突き崩して行き、 ついには、海軍を私物化し、王の暗殺を企てたというでっち上げの罪状を着せられ、アルトゥロは処刑された。

故郷に残してきた彼の家族達もまた、大罪人を出した不敬な一族という事で、領地を没収されその地を追放された。